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湧水・地下水保全条例策定の背後で進む規制緩和の動き(10.7.27) [5.緑の基本計画と湧水・地下水保全条例]

(2010.7.27記)

国分寺市では「湧水・地下水保全条例」の策定に向けて、現在、「国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会」において条例素案の検討が行われております。
この「湧水・地下水保全条例」には、具体的な規制は盛り込まれず、市はあくまでも理念条例として仕立てるとしているため、具体的は開発規制は「まちづくり条例」に定められた開発整備基準に委ねられます。

このまちづくり条例の開発基準が、今、緩和されようとしています。
開発事業下における湧水・地下水保全のための具体的な規制に関して、国分寺市がまちづくり条例をどう変えようとしているのかを、ここに記録しておきます。

■関連条例
市が変えようとしているのは、赤字の部分(別表3の1項のア)。
「観測区域」に指定されているエリアは変更せず、指定区域以外でも観測などの措置を要請することができるよう明文化する一方、指定区域内であっても市長が必要ナシと判断すれば観測は行わないとするものです。

※これまでも、コスモスイニシアの泉町、旧四小跡地の西元町は「観測区域」外でも観測をさせた実績がある。
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<国分寺市まちづくり条例>
別表第3(第50条,第71条関係) 開発事業の整備基準
9.国分寺崖線の保全及び再生に関する措置

(1) 国分寺崖線区域内の湧水源の周辺で規則で定める区域内において行う開発事業であって,れき層に及ぶ構造物を設ける行為及びその関連行為を伴うものについては,次に定める基準によるものとする。
ア 規則で定めるところにより,開発区域の地下水位及び湧水源の観測を行うこと。
イ 建築物の基礎工法が湧水に及ぼす影響について,規則で定めるところにより,事前評価を行うとともにその結果を公表すること。
(2) 国分寺崖線区域内において行う開発事業であって,建築物の屋上設備又は規則で定める工作物の設置を伴うものについては,その設置について周辺の環境と調和した形態,色彩,素材等についての計画を作成し,市長と協議すること。


<国分寺市まちづくり条例施行規則>
別表第4(第62条関係)
5.国分寺崖線の保全及び再生に関する措置

(1) 条例別表第3の9の項第1号の規則で定める区域(以下「観測区域」という。)は,別表第5に定める区域とすること。
(2) 条例別表第3の9の項第1号アの観測は,れき層に達する観測井を観測区域内に1箇所以上設置し,開発事業の着手前から工事完了後2年を経過するまでの間,水位,水質等について月1回以上定期的に行うものとし,その結果を市長に報告すること。
(3) 条例別表第3の9の項第1号イの事前評価を行うに当たっては,当該開発事業の計画における基礎の杭打ちの深さ,材質等を考慮して湧水に及ぼす影響を評価し,影響の少ない基礎工法の選択に努めるとともに,その結果を市長に報告すること。
(4) 前2号の規定は,開発区域が観測区域の内外にわたる場合であって,観測区域内にれき層に及ぶ構造物を設ける行為及びその関連行為を行わないときは,適用しない。
(5) 条例別表第3の9の項第2号の規則で定める工作物は,建築基準法施行令第138条(工作物の指定)第1項各号に掲げるものとすること。

別表第5 国分寺崖線区域内において地下水及び湧水源の観測を行う区域
東元町三丁目の一部,西元町一丁目の一部,南町一丁目の一部,南町三丁目の一部,泉町一丁目の一部,東恋ヶ窪一丁目及び西恋ヶ窪一丁目の一部

備考 国分寺崖線区域内において地下水及び湧水源の観測を行う区域を表示する図面は,市長が告示する。

■施行規則別表5の「観測区域図」
区域図は条例や規則には掲載されておらず、市長が告示するものなので、通常、市民の目に触れるところには出てきませんが、今回、初めて市民会議の資料として出てきました。私もはじめて見ました。

配布された資料自体が非常に不鮮明ですが、スキャンした画像を掲載します。
国分寺崖線区域内において地下水及び湧水源の観測を行う区域を表示する図面.jpg

国分寺崖線区域内において地下水及び湧水源の観測を行う区域を表示する図面.doc

■観測区域の範囲
縦縞のまだらな部分が「国分寺崖線区域」、網掛けの部分が「観測区域」、三角印が湧水です。
「観測区域」の範囲は、湧水の北側台地上では、特別に広い日立中央研究所を除けば、湧水から100m~300m。
湧水の南側は、狭いところで20m、広いところでも70~80m程度。
観測区域の南側の区切りは、湧水に一番近い道路・用水・野川になっているようで、真姿の池湧水の南側は元町用水沿い(お鷹の道)までが区域にはいっています。

■市の見直し案の内容
1)開発区域内に湧水源がある場合は、開発区域内の地下水位及び湧水源の観測を行うこととするが、れき層に及ぶ構造物を設ける行為及びその関連行為が湧水源に与える影響がないと市長が認めるときは、湧水源の観測は不要とする。(建築物がその湧水源より相当離れている場合や下側(南側)にある場合などは、湧水源の観測は除外することとする。)
2)開発区域内に湧水源がない場合であっても、湧水減の周辺で規則で定める区域内で行う開発事業については、必要に応じて地下水位の観測や基礎の事前評価などを行うこととする。
3)湧水源の周辺で規則で定める区域外であっても、国分寺崖線区域内の湧水源を保全するために、必要な措置を講じることについて、市長から協議を求める旨も規定をすることとする。

■市の見直し案の問題点
1.湧水というものは、そこで地下水が全部吐き出されるわけではなく、その先にも水みちは続いている。涸渇してる湧水も、地下水が無くなったのではなく、湧出口よりも地下水位が下がっているだけで、水みちは続いている。こうした地下水が用水や野川の河床の下の地下水位を支えているのだから、湧水の下流側なら何をやってもよいということにはならない。

2.湧水源南側の直近の場所で水みちを切り、地下水を汲み上げて下水に捨てるようなことをやれば、湧水源の地下水位が下がり、湧出に影響することだってありえる。
地中で土の抵抗を受けて流れている地下水を分断して、空気のあるところに出せば、当然水の流れは速くなり、地下水が引っ張られれば、湧水源の地下水位が下がって出なくなる。
湧水源の南側なら影響が無いとか、ここは観測の必要が無いなどどいうことが誰に言えるのか。市長にその判断がつけられるのか。

3.1)2)の内容を認めてしまうと、ハケ下直近(崖地を含む)に大規模な開発計画が起こった場合、地下水に対して何をやってもよいことになってしまい、「地下水および湧水源の観測をすることになっている区域」についての定めは無意味になってしまう。

■まちづくり市民会議の答申内容(7/22)
「開発区域内に湧水源がない場合、地下水位観測も行わなくてよい」と行政が間違った条例解釈を行っていたことが6/28の市民会議で判明。
7/14市民会議において、その運用実態を確認したところ、「観測をすることになっている区域内にはこれまで、礫層におよぶ工事の事例自体がなかった」との答弁がありました。
この件について市民会議は検討を行い、「湧水・地下水に影響をおよぼす区域を観測区域として定めたのであるから、開発区域内に湧水源がない場合でも開発区域内の地下水位の観測を行う趣旨となるよう、まぎれのない記述をとること」としました。

<市民会議の見直し提言>(答申内容)
1)湧水源の周辺で規則で定める区域内で行う開発事業は、湧水源の有無にかかわらず、地下水位の観測を行う。
2)開発区域内に湧水源がある場合は、建築物の位置にかかわらず、湧水源と地下水位の観測を行う。
3)湧水源の周辺で規則で定める区域外であっても、国分寺崖線区域内の湧水等を保全するため、必要な措置を講じることについて、市長から協議を求める旨も規定する。

■大綱案策定について
「第二次 国分寺市まちづくり条例改正大綱(案)の策定に向けての検討結果」の中の「市民会議の見直し提案」が市長に対する答申となり、これにて市民会議の任務は終了となりますが、大綱案を行政が作成する際、市民会議の答申に沿う内容になるとは限りません。第一次の改正案の中には、答申内容とは関係なく、庁内で最終決定されて議会に上程されたものがありました。条例で位置づけられている市長の諮問機関(審議会)の答申に行政が従わないということ自体、すでに異常事態です。
現在、議会で継続審議中の第一次改正案に第二次が加わるので、改正条項があまりにも多すぎて、議決されるまでに相当な時間がかかることは必至。その間は「現行条例」が守られなければなりませんが、行政の「規制緩和改正案」が実質運用されてしまうことがないよう、また、新しく制定される「湧水・地下水保全条例」の中身が、未だ行政の「案」でしかない規制緩和を前提とした内容になってしまわないよう、よくよく監視をして行かなければなりません。

(2010.7.27記)
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