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施策の決定に市民参加を保障しない条例(10.8.24) [5.緑の基本計画と湧水・地下水保全条例]

(2010.8.24記)

昨日(8/23)14時から国分寺市役所プレハブ会議室第1で、国分寺市緑の基本計画見直し等検討協議会を傍聴しました。
パブリックコメント前の最後の検討協議会で、湧水・地下水保全条例の素案についての最終の検討でしたが、この土壇場に来て、素案にはまたもや重大な変更がありました。
湧水・地下水に関する施策について、市長が諮問を行う附属機関の構成員を「識見を有する者」だけに限定し、6月30日の素案にはあった「市民」(市内で緑、湧水、地下水、井戸等の保全活動をしている団体の代表者)が削除されてしまったのです。つまり、市民が参加することを保障しない内容になっているのです。

これ、自治基本条例に違反していませんか?

自治基本条例は、基本理念条例なので、違反したからと言って罰則が規定されているわけではありませんが、主権は市民にあること、市民生活に影響を与える施策決定に市民が参加することを市が保障しなければならないことをうたっており、行政がこの理念を必ず守らなければならない基本条例です。

6月30日の素案では、第15条に「湧水等保全検討会議」を設置する規定があり、湧水および地下水の保全に関する事項等を検討するために市長が設置し、検討会議は市長の諮問に応じ、湧水および地下水に関する事項について調査検討し、結果を市長に答申する市の附属機関として位置づけられています。
検討会議の構成員は、委員7名以内で、そのうちわけは
(1)市内で緑、湧水、地下水、井戸等の保全活動をしている団体の代表者 2名以内
(2)識見を有する者 5名以内

5月の時点での素案では、この構成員が5名以内となっており、(1)は1名以内、(2)が4名以内でしたが、緑の基本計画見直し等検討協議会で「これでは市民が少なすぎる」という意見が出て、6月30日の素案では、(1)が2名以内、(2)が5名以内に変更されました。

ところが、昨日の最終素案では、庁内の条例策定委員会からの意見により、市民団体からの委員が削られ、「識見を有する者」のみ5名となっていました。
もちろん、検討委員会の委員からは猛反発が出ましたが、緑と水と公園課長は、「市内で緑、湧水、地下水、井戸等の保全活動をしている団体の代表者」にも識見を有する者がいるからそこに含まれる、市民を排除したものではない、という答弁をひたすら繰り返していました。

これは全くの詭弁であって、そもそも市長の諮問機関について定める条例において「市民委員何名以内」などという規定があるのは、市民が施策決定に参加する権利を保障した規定、つまり権利規定なのですから、これを削除したというのは、市民の権利規定を削除したということです。
どんな理屈をこね、なんと答弁しようとも、この素案では、市の附属機関に市民が参加する権利が保障されないことになってしまいます。
これは、あきらかに自治基本条例違反ではないでしょうか。

これが自治基本条例違反だと考える理由は、第 6条と第 7条の規定に反しているからです。

第 6条では、市民生活又は地域に影響を及ぼす重要な施策及び制度の導入において、政策の立案, 実施及び評価のそれぞれの過程において参加の権利が保障されなければならないと定められています。

また、第 7条では、市は,前条に定める参加の権利を保障するため, 事案に応じ次の各号のいずれかの方法を用いることが規定されています。
(1) 市の附属機関への委員としての参加
(2) 公聴会,説明会, 懇談会等への参加
(3) 個別の施策又は課題について検討を行うことへの参加
(4) パブリック・コメントへの参加
(5) アンケート調査その他必要と認める方法への参加

湧水・地下水に関する施策は市民生活又は地域に影響を及ぼす重要な施策であり、市長が施策を決定にあたっては、当然、市民の参加が保障されなければならないはずです。
参加の方法は、第7条に規定された(1)から(5)までのいずれかの方法でよいという規定ですが、個々の開発事業おける湧水・地下水への影響について検討し、市長が事業者に対しどのような指導を行うかという意思決定をするにあたって「市民」が意見を述べる機会というのは、(1) の「市の附属機関への委員としての参加」以外にはありません。(公聴会は開発区域の近隣住民に限定されますし、個々の開発事業について「市」がみずから懇親会や説明会を開催することはなく、パブリックコメントの実施もありません、個別の案件にアンケート調査が実施されることもありません)
今回出された最終の素案では、この参加が保障されていないのです。

個々の開発事業おける湧水・地下水への影響について検討し市長に答申を行う役割は、現行のまちづくり条例下では、まちづくり市民会議が担っています。
もちろん、まちづくり市民会議の討議内容は、開発による湧水・地下水への影響だけでなく、住環境・自然環境・景観への総合的な影響が討議の対象となっており、また、まちづくり市民会議が開催されるのは、大規模土地利用構想が出された時などの定めがあり、その他、市長が答申を必要とした場合に限られますいますが、このまちづくり市民会議には、公募市民委員の参加規程があります。市民が施策決定に参加する権利が保障されています。
しかし、湧水・地下水保全条例の規定により「湧水等保全検討会議」(昨日の素案では、この名称も別のものにかわっていました)が新設された時、個々の開発事業おける湧水・地下水への影響についての検討はどこが行うのか(「まちづくり市民会議」が行うのか、「湧水等保全検討会議」が行うのか)が不明なのです。

一方では、まちづくり条例自体、湧水・地下水観測を行う区域に関する規定が、以下のように変えられようとしています。

1.開発区域に湧水がある場合でも市長判断で観測を行わなくてよいことにする。
2.開発区域内に湧水が無い場合、現行では地下水の観測をしなくてはならないが、市長の判断次第でやらなくてすむように規定をかえる。

こうした「市長判断」によって、観測区域規定そのものが骨抜きにされる情勢が片方に存在している中で、湧水・地下水に特化した諮問機関が新設されれば、いったいどうなるのでしょうか。
現に、昨日の事務局側の答弁では、「市長の意思に沿った決定をするために、附属機関の構成員は識見を有する者に限定するようにという庁内委員会からの指示」などと、信じられない言葉がボロボロと出てきていました。(まるで、主権は市民ではなく、市長にあるかのごとく)
これが何を意味するのかと言うと、行政の言うことを聞く有識者だけを集め、そこに市民の監視の目を入れなければ、諮問機関とは名ばかりで、行政の意のままにできるということです。

個々の開発事業おける湧水・地下水への影響について検討し市長に答申を行う役割をまちづくり市民会議が担っている限りにおいては、市民参加が保障されています。
しかし、新設される「湧水等保全検討会議」(昨日の素案では別名称に変更)の答申が優先されることになれば、主権者たる市民の参加のない場所でものごとが決定されるということです。
仮に、両方の附属機関に答申させたとしても、両者の答申の内容が異なる場合、有識者だけによる答申に市長が従うことになるとすると、市民意見はどこにも反映されない。
そういう「すり抜け」の仕組みを行政が自ら作ることに、最大の問題があるのです。

湧水・地下水に関する施策について、市長が諮問を行う附属機関の構成員を「識見を有する者」だけに限定し、6月30日の素案にはあった「市民」が削除されて、市民が参加することを保障しない条例が誕生するようなことがあると、国分寺市はファシズムへの坂道をまっさかさまに転がりおちることになります。
これはなんとしても食い止めねば、と思います。

<参考>
国分寺市自治基本条例とは:
http://www.city.kokubunji.tokyo.jp/keikaku/4242/006702.html
国分寺市自治基本条例条文:
http://www.city.kokubunji.tokyo.jp/dbps_data/_material_/localhost/reiki.pdf

(2010.8.24記)

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